始めに
この創作物はフィクションであり、
実在の人物及び団体とは関係ありません。
しかし、こちらの認識不足により、
以前から活動されている方々の活動内容及び
創作内容と重複してしまう場合も考えられます。
この場合、相互の活動の住み分けの為に、
こちら側での名称変更及び内容の見直しなど、
公の場での発表の後、プラン修正として考えております。
「こちらの創作物の内容について何かございましたら、
連絡をいただければ、
再考の後に内容修正いたします。」
この考えをこちらの基本的な活動方針とし、
この創作物の内容にて、
全ての皆さんに、このストーリーを贈ります。
オープニング
大きな建物の横にある自然豊かな広場に、
一匹のスズメバチが飛んでいた。
このスズメバチは、
広場で静かに佇んでいる人物の目の前へ飛んで来た。
普通なら、スズメバチが飛んで来たら
誰もが驚いてしまう事だろう。
しかし、この人物は、
パシッ・・・
というより、音もたてずにスズメバチを
優しく自らの指でつまんで捕獲した。
スズメバチはこの人物の手に捕らえられているものの、
不思議な事におとなしかった。
すると、この人物の元へ別の人物が駆け寄って来た。
スズメバチを手にしている人物は大人の女性位の体格で、
走ってきた人物は子供位の体格だった。
そして、この走ってきた人物は、
スズメバチを手に持った人物に話しかけた。
「ブヒ、ねぇたん、
スズメバチさんが不思議だと言ってるブヒ。」
「嫌われ者のオレを処分しない
変なヤツだと言ってるブヒ。」
すると、スズメバチを手に持った人物が、
「システムチェックに使ったけど、
殺めるつもりは無いと伝えて。」
こう言った後、
この人物は手からスズメバチを静かに放した。
「変なヤツらだけど、
オレの命を奪わない知性には礼をいう
って言ってるブヒ。」
この二人の周りをしばらく飛んでいたスズメバチは、
この二人の元から自然へと帰っていった。
「ブヒ、ねぇたん、もうすぐシステムセンターの
窓口稼働時間だブヒ。」
「そうねプグ助、行きましょう。」
こう話していた二人は、
広場の横にあるシステムセンターの建物の方へ
歩いていった。
すると、建物の方へ向かっていた
プグ助と呼ばれた人物は、風の音を聞いた。
ヒューッ・・・
そして、この風の音の奥に、
プグ助は誰かからの声を聞いた。
「自然の声を聞ける者よ、
あなたと私は、いずれ会う事になるでしょう・・・」
プグ助は、広場の方に振り返って周りを見た。
「ブヒッ、自然の声って何ブヒか?」
しかし、振り返った先には誰もいなかった。
立ち止まって考え込んでいるプグ助に、
もう一人の人物が声をかけた。
「プグ助、行くわよ。」
プグ助はもう一人の人物の方へ走っていき、
二人揃ってシステムセンターの建物の方へと
歩いていった。
第一章 (システムセンター)
ブヒ。
今から少し昔の話ブヒ。
ねぇたんやぼくちゃん、
そしてみんなの暮らすこの地というこのエリアに、
不思議な出来事が起きたらしいブヒ。
この出来事が起きた時、
ぼくちゃんは生まれてなかったブヒ。
だけど、この不思議な出来事は続いていて、
街の人達は今も対策を施しているらしいブヒ。
この不思議な出来事は、
今も続いているって言われているブヒけど、
ぼくちゃんは、よくわからないブヒ。
人類は、文明社会文化を発展させて、
マシンテクノロジー及びバイオテクノロジーに
力を入れていた。
そして、ある目的の達成を目指していた。
この目的とは、自然という自らが存在する環境の解析と、
自らという人間を含む動植物たる
生命の可能性への探求であった。
これを目標として、人類は物理現象や
DNAレベルでの科学技術を熟成させていった。
これにより、市民の日常生活に必要な食べ物や道具、
はては宇宙開発に至るまで、
人類はテクノロジーの恩恵を手にする事が出来ていた。
しかし、数十年前、
エリアを管理していたセントラルシステムのAIへの
過入力により、バグが発生してしまった。
これにより、
システム管理下の機械の誤動作による
この地という人類エリアの歴史に刻まれる
大規模な広域管理機能破砕暴走状態に進行してしまった。
(時のコミュニティー統治機関による発表)
数十年前に起きたこの出来事は、
発生から数年後に初期状態での破砕を食い止めたものの、
システムエラーの影響は長く続いた。
この事後処理への対策へは時間が掛かってしまい、
この対応の遅れにより、
バグにより制御システムが誤動作をおこした機械が
各地で発生してしまった。
これに対応する為、
時のコミュニティー統治機関は、
止むを得ないという判断による苦肉の策として、
二つの措置を人類が居住する全エリアに投入した。
一つ目は、人類側への措置。
誤動作してしまった機械から自らを守るための手段として、
ライセンス制による
「特殊装備品所持及び使用における枠組み」を提供すること。
そして二つ目は、機械側への措置。
受動的入力により機能していただけの機械システムのAIに
能動的に入力内容を判断する能力、
いわゆる「自我意識」を組み込み、
過入力警戒監視及びセキュリティーへの協力を条件に、
自我意識内臓のAIを「知性的存在」として
登録認識するというものだった。
大規模な広域管理機能破砕暴走状態の再発防止の為、
人類がAIにテクノロジーを容認した事により、
これまで人間の質問に答えるだけの存在だった
AIの受動的プロセスが発達し、
能動的に思考するプロセスたる自我意識を得た。
さらに、AIによるプロセスのオートメーション化も進み、
ついにはAI制御ユニットを搭載した
二足歩行ロボットという、
いわゆるアンドロイドも誕生した。
・・・
ここは、あるエリアの街の外れにある
大きな自然公園の横に建てられた、
少し大きめな建物のシステムセンター。
このシステムセンターの主な役割りは、
親会社製品の販売やサポートや問い合わせなどへの対応
という、窓口業務を行なっている場所だった。
しかし、親会社との契約外の部分を活かして、
会社独自の新たな技術開発も行なっていた。
(現実ではあり得ないけど、太っ腹な親会社だな~)
そしてこの技術開発により、システムセンター自社製の
AI制御ユニット搭載型二足歩行人型アンドロイドを二体、
自社ブランドの試作型として開発した。
今回の話の主人公は
この二体作られたアンドロイドの
二体目の方なのだが、
まずは、一体目の方を紹介しておく。
一体目のアンドロイドは、名を「メシルコ」という。
親会社のライセンスフリー技術をふんだんに盛り込み、
精密動作を得意としている。
性格は、しっかりしていて真面目で、
自我意識搭載AIとして「知性的存在」登録認識されており、
「特殊装備品所持及び使用における枠組み」への許可も取得、
ライセンス所有個体として稼働している。
このシステムセンターでの役割としては、
システムメンテナンス分野を受け持っていた。
このメシルコの機能性による立ち振る舞いは、
何とも絵に描いた様な模範的個体として、
システムセンター内外でも良い評価を得ている様だ。
外見的特徴としては、
頭部にAIシステムと連動している
バイザーを装備している。
この様なメシルコだが、
今は何も行なわずに
システムセンターのエントランスホールで待機していた。
「プグ助はどこへ行っているのかしら。」
メシルコは、こう呟きながら
エントランスホールで佇んでいると・・・
「ブヒ、
システムセンターの敷地は道順がややこしくて
分かりづらいブヒ。」
「ダンゴムシさんを見ていたら
ねぇたんとはぐれて
ここに来るまで時間がかかったブヒ。」
と、もう一体のアンドロイドが
メシルコより遅れてやって来た。
この、遅れてやって来た個体が二体目なのだが、
「プグ助、のんびりしすぎよ、
いつもの様に十秒待つわ。」
と、メシルコは二体目のアンドロイドに言った。
そして、自らの顔にバイザーを装着した。
メシルコは顔にバイザーを装着すると、
性格がソリッドに尖がる機能面を持っていた。
しかし、いつも事あるごとに待たされているらしく、
二体目のアンドロイドを促す様にバイザーを装着した。
「ブヒ~、すぐに行くブヒから、
ねぇたんバイザーを外すブヒ~。」
メシルコが思わずバイザーを装着して声を掛けるほどに
ノンビリというかトロくさいというか、
「おつむいい天気」という説明がしっくりくる存在が、
このシステムセンターの二体目のアンドロイドである。
「ブヒ~、ねぇたんがキラーマシーンに変わると
こっちが大変ブヒ~。」
この二体目のアンドロイドは、
名を「プグ助」といい、
「ブヒッ。」
このシステムセンター自社製の
メシルコの次に開発された
AI搭載型の二足歩行アンドロイドである。
性能的には、メシルコと比べると普通・・・
「お待ちどうブ・・・」
ドンガラガッシャ~~~ン!
「ブヒ・・・、
掃除用具に足をひっかけてしまったブヒ~・・・」
まぁ・・・
普通まではもう少しという性能であった。
「全く・・・、
仕方がないわね・・・」
メシルコはバイザー装着を解除した後、
プグ助の散らかしてしまった掃除用具を片付けた。
しっかりとした姉のメシルコと比べると、
プグ助の方は何とも
「おつむいい天気」な機能性である。
しかし、こんなプグ助ではあるが、
馬鹿にも取柄くらいあるという様な感じで
メシルコにも無い機能が内蔵されていた。
ぶ~ん・・・
メシルコとプグ助の前にカナブンが飛んで来た。
カナブンを見たプグ助は、
メシルコには無い感覚で何かを読み取った。
「ブヒ、カナブンさんは
建物の外へ出る道を探しているブヒね。」
「ねぇたん、
カナブンさんを建物の外に逃がしてくるから、
もう少し待っててブヒ。」
このプグ助の行動は、プグ助に内蔵されている
「試作型自然由来パルス送受信回路」により、
自然から発せられるパルス信号を自らのAIを使い
データ解析の後、言語変換による理解及び
行動の判断基準とするシステムによるものである。
メシルコはカナブンを逃がしに行ってしまったプグ助を、
仕方無いと思いながらしばらく待った。
「ブヒ、ねぇたんお待ちどうブヒ。」
メシルコは、少し呆れたものの、
「少し遅れたから急ぐわよ。」
「ブヒッ。」
と、二体(?)で行き先へ向かった。
・・・
二体(?)が向かった行き先は、
システムセンター内にある統合制御室だった。
このシステムセンターは、
AIによるフルオートメーションシステム
により稼働していた。
関わる人間と言えば、
時折メンテナンスに来る親会社の社員か客くらいである。
この、無人店舗と言うか無人工場の
運営及び管理を行なっているのが、
統合制御AIという存在だった。
「時間通りとはいかなかったから、
「パパちち」は多分おかんむりね。」
「ブヒ、またパパちちから
苦いお説教を飲まされるブヒ。」
メシルコとプグ助の言うパパちちという存在が、
このシステムセンターの統合制御AIなのだが、
若干こってりとした性格のAIだった。
二体(?)は、統合制御室の前までやって来た。
そして、ひと呼吸間をおいた。
「さぁプグ助、入るわよ」「ブヒッ。」
メシルコとプグ助は、統合制御室へ入った。
・・・
「メシルコとプグ助、到着しました。」
と、メシルコが統合制御室の中央にある
大型タワー状のハードウェアに声を掛けて報告した。
すると、
「おぅ、集合時間に359秒オーバーとは、
少したるんでるのぅ、ワレ。」
と、
この大型ハードウェアの正面にあるモニターに顔が表示され、
パパちちのおかんむり具合が
モニターのグラフィックと音声で
メシルコとプグ助に飛んできた。
「プグ助が少しぐずってしまったから。」
「カナブンさんを外に逃がすためブヒ。」
この二体(?)の言い訳を聞いたパパちちは、
「おぅメシルコ、
姉ちゃんのお前がプグ助を
見てやらんといかんだろ、ワレ。」
「まぁ、そうね・・・」
「ブヒッ・・・
(今回はぼくちゃんにおとがめ無さそうブヒ)。」
パパちちに叱られているメシルコをみていたプグ助は、
難を逃れたと高を括っていたが、
「おぅ、メシルコもプグ助も、
たるんだ気持ちを引き締める為、
この今朝取れたて野菜で作った「パパちち汁」、
ぐいっといっとけやワレェ~。」
と、二体(?)揃って仲良く叱られる事となった。
統合制御室の制御ロボ(雑用をこなすお手伝いロボット)が、
メシルコとプグ助の前に
飲み物の入ったコップを持ってきた。
「今日もこの苦い汁を口にするはめになったわ・・・
(プグ助を見つめる)。」
「ブヒ~ッ、
おとがめ無しかと思ったら苦いお説教ブヒ・・・」
パパちちは
パパちち汁なる物をメシルコとプグ助に提示したが、
このパパちち汁とは、
このシステムセンターで室内栽培生産している野菜数種類を
洗った後にミキサーですり潰して抽出した
このシステムセンターの食品部門のラインナップ商品、
いわゆる野菜ジュースである。
だが、メシルコとプグ助は、
生物ではなくアンドロイドという機械である。
しかし、機械である二体(?)は、
パパちち汁なる飲み物を自らの体内に取り込む事が出来る。
これは、メシルコとプグ助の持つ
「有機物エネルギー変換システム 」の機能である。
このシステムにより、二体(?)は
自らの存在を維持する為のエネルギーを、
自然の有機物から変換する
(いわゆる食べ物を口で食べる)事が出来るのだ。
この「食べ物を口にして自らのエネルギー補給を行う」
というプロセスを行える機能を持った二体(?)は、
パパちち汁もエネルギー変換出来るのだが・・・
「うっ・・・、
今日も苦いわね、この緑色の苦い汁・・・」
「ブヒ・・・、
色が毒々しくて苦くて目が回るブヒ・・・」
と、二体(?)共お気にめさない様子だった。
・・・
健康には良いけど苦い野菜ジュースを飲み干した
メシルコとプグ助に、
パパちちはいつもの様に号令をかけた。
「おぅ、それじゃあ
有機物エネルギー変換システムも
しゃっきり目覚めただろうから、
今日もキビキビ働くぞ、ワレ。」
「メシルコはシステムメンテナンス、
プグ助は建物内の掃除だ、ワレ。」
と、パパちちにこう言われた二体(?)だったが、
プグ助が小声で・・・
「掃除なんて2日ごとぐらいで大丈夫ブヒ・・・」
などと、思わずグチをこぼしてしまった。
これを聞いたメシルコが、
「バカ、
プグ助、パパちちに聞かれ・・・」
とプグ助を止めようとしたが、
すでにグチをパパちちに聞かれてしまった。
「おぅ、プグ助、
しょんべん臭ぇ事よう言うたの~ワレ、
毎日のメンテナンスが重要な事を復習する為に
パパちち汁をおかわりするなんて
良い心がけだぞ、ワレ。」
「ブヒ・・・、
思わずグチがこぼれてしまったブヒ、
しかも高感度パパちちセンサーで
キャッチされてしまったブヒ。」
パパちちは、
メシルコとプグ助の前に
パパちち汁のおかわりを提示した。
プグ助がグチを言った事への連帯責任として、
メシルコも二杯目を飲むはめになった。
「うわっ・・・、さらに苦いわ・・・」
「ブヒ・・・、泣きっつらにハチ状態ブヒ・・・」
「おぅ、それじゃあ今日もいってみようか、ワレ。」
パパちち汁をもう1杯
おかわりしたか飲ませられたかは置いておいて、
メシルコとプグ助は持ち場へ向かって移動した。
「まったく・・・、
アンタが余計な事を言うから
いつもの倍苦かったわ。」
「ブヒ~ッ・・・」
・・・
二体(?)はクドクドブヒブヒと
グチをこぼしながらも、
それぞれの持ち場についた。
「じゃあプグ助、
後で見に来るからしっかりと掃除するのよ。」
「ブヒ、ねぇたんは疑り深いブヒね。
掃除はぼくちゃんにおまかせブヒよ。」
こうして、
メシルコはシステムメンテナンスに、
プグ助は建物内の掃除を行なった。
「ブヒ、
今日も掃除を始めるブヒ。」
こうして、今日もいつもの
システムセンターの日課をこなす二体(?)だったが、
システムメンテナンスを行なっているメシルコは、
管理システムのモニター画面を見ながら
少しそわそわとしていた。
「プグ助が「あの悪いクセ」を
行なっていなければ良いのだけど・・・」
と、メシルコはプグ助が
「ある行い」をしでかしていないかと心配していた。
これまでの日常において、
プグ助は「ある悪いクセな行い」を注意されていた。
「ブヒ、次は冷蔵庫の拭き掃除ブヒ。」
このプグ助の「ある悪いクセな行い」に対しては、
パパちちからプグ助に厳重注意が行なわれていて、
再度プグ助がこれをしでかした時は・・・
「おぅプグ助、次も同じ事をやった場合は、
「特殊保管庫」行きの後・・・」
「「然るべき処分」だぞ、ワレ。」
と、パパちちからプグ助は言い渡されていた。
「ブヒ、冷蔵庫の中も整理しておくブヒ。」
システムメンテナンスを行なっているメシルコだったが、
「いくら「おつむいい天気」のプグ助でも、
パパちちから厳重に注意を受けているから
心配は無いはず・・・」
メシルコは大丈夫と思いつつも、
システムメンテナンスに区切りをつけ、
休憩がてらプグ助を見に行った。
メシルコが不安に思う
プグ助の「ある悪いクセの行い」とは・・・
「プグ助、しっかり掃除してるの?」
メシルコがプグ助を見に来た時、
プグ助は・・・
「ブッヒブッヒブヒ~、
このジャンボパックの揚げ物の味が
たまらないブヒ~。」
と、冷蔵庫の中にあった揚げ物パックに
顔をつっ込ませて「つまみ食い」をしていた。
そう、
プグ助のある悪いクセの行いとは、
つまみ食いであった。
「ブッヒモグ、ブッヒモグ~」
「・・・(あちゃ~)」
つまみ食いに没頭するプグ助と、
これをあきれ顔で見ているメシルコだったが、
瞬く間にガードロイド
(このシステムセンターの警備ロボット)が
やって来てしまった。
そしてメシルコがプグ助をかばう間もなく、
パパちちの知る事となった。
この後、パパちちの判断により、
プグ助は揚げ物のジャンボパックに顔をつっ込んだまま、
ガードロイドにある場所へと運ばれて行った。
・・・
「ぷっふぅ~、ごちそうさまブヒ・・・
って、ここはどこブヒ?」
プグ助が我に返ると、
システムセンター内にある「特殊保管庫」に
プグ助は移送(?)されていた。
「ブヒッ、
ここはどこでぼくちゃんは何でここにいるブヒ?」
訳も分からずプグ助が特殊保管庫の中で佇んでいると、
特殊保管庫のドアへ向かって来る足音が聞こえてきた。
この足音は、
顔にバイザーを付けたメシルコの足音だった。
「プグ助、あれだけ言われていたのに、
つまみ食いをしてしまったわね。」
「ブヒ、そう言えば冷蔵庫の中の揚げ物を
思わず食べてしまったブヒ。」
メシルコはプグ助の言葉を聞いた後、
坦々とした口調でプグ助に告げた。
「プグ助、猶予期間中のルール破りにより、
残念だけどアンタは「抹消処分での解体」
という判断をパパちちが下したわ。」
「ブヒッ?」
「アタシも出来るかぎりアンタをフォローしたけど、
厳正な判断たるパパちちの決定に
アタシも同意したから、
こうして顔を見るのも明日で最後よ。」
「ブヒッ。」
「明日の朝でお別れだけど、
これまでの付き合いの報酬として、これをあげるわ。」
プグ助は、バイザーで顔を覆ったメシルコから
「タマゴボールクッキー」を渡された。
「明日の朝、ここへ迎えに来るわ。」
「ブヒ・・・」
「せめてもの情けとして、
明日は姉のアタシの手で、
痛みを感じさせず首を切り落としてあげるからね。」
こうプグ助に告げたメシルコは、
バイザーの奥に少し寂し気な顔を見せたものの・・・
ドアの前から去っていった。
「ブヒ・・・、よく分からないけど
タマゴボールクッキー食べるブヒ・・・」
・・・
夜になり、特殊保管庫の窓から
月明かりが室内へ差し込んでいた。
窓からのささやかな明かりに照らされて、
プグ助はタマゴボールクッキーを
サクサクとほおばった。
「ブヒ・・・、ごちそうさまブヒ・・・」
タマゴボールクッキーを食べきったプグ助は、
窓の外の月を眺めていた。
「ブヒ、もっと食べたいブヒけど・・・」
「パパちちもキラーマシーンになったねぇたんも、
ケチだブヒ・・・」
プグ助は、
窓から見える月を見上げながら呟いた。
「もっと何か食べたいブヒ・・・」
すると、
ヒューッ・・・
と、
風が吹く音が窓から聞こえた。
そして、
風の音の奥から声が聞こえてきた。
「自然の声を聞ける者よ・・・」
「ブヒッ?」
「たとえあなたが、
みにくいイノブタ貪欲畜生だとしても。」
「ブヒブヒッ?」
「その願いを叶える為への
あなたの可能性に機会を与えましょう。」
「ブヒブヒブヒッ?」
何処からか声が聞こえてきた後、
特殊保管庫の窓の外から風が室内に吹き込み、
月明かりが映る壁面に丸い光が映し出された。
そしてこの丸い光は、
空中に浮く光る球状の存在となって
壁から出てきた。
空中に浮いているこの光る球状の存在は、
プグ助に言った。
「私は、この地の自然環境に
張り巡らされているシステムの意識・・・」
「この「エネルギー分散調整回路の意志」という私に、
まずは貴方の名前を教えて下さい。」
プグ助は、いきなりでぼ~っとしていたものの、
この謎の存在に自己紹介をした。
「ブヒ、
ぼくちゃんは
このシステムセンターパパちちの
アンドロイド二番機
プグ助と申しますブヒ、
え~っと・・・誰さんだったブヒ?」
「私の名は「エネルギー分散調整回路の意志」と
呼んで下されば良いですよ。」
「ブヒッ、
え~っと・・・「回路しゃん」?」
「まぁ、その呼び方でも良いですよ。」
プグ助は、突如現われた回路しゃんの話を聞いた。
「この地の自然の声を聞く事が出来る
プグ助さんに・・・」
「「プグ助さんと私による特殊な相互契約」の
お願いに来ました。」
「ブヒ、
そうごけいやく?
押し売りか何かブヒか?」
よく分からず困っているプグ助に、
回路しゃんが説明をした。
「押し売りではありません。
プグ助さんと私の願いが同じ道で繋がったのです。」
「ブヒ、
ぼくちゃんの願いと回路しゃんの願いが
同じブヒか?」
「ニュアンスが少し違います。」
「プグ助さんの願いは
「何か食べ物が食べたい」で・・・」
「私の願いは
「プグ助さんに食べ物の味や感想を聞かせてほしい」
という感じです。」
「ブヒ、そうなの?」
「でも、何か悪徳催眠商法みたいブヒ。」
プグ助は回路しゃんからの申し出に
疑問をもった顔をしていたが、
回路しゃんはプグ助に説明を続けた。
「プグ助さんが疑う気持ちも分からなくもありません。」
「そして、私の願いを叶える為には、
長い旅をプグ助さんに行なってもらう事に
なってしまいます。」
「ブヒ、長い旅なのブヒ?」
「はい、
この場所からは出る事は出来ますが、
とても長い旅になります。」
「ブヒ~・・・」
プグ助は少し考えた後、
自らの考えを決めた。
「ブヒ、
明日ねぇたんに首を切られるより、
回路しゃんの長い旅に付き合うブヒ。」
「もうここへは戻ってこれないかも知れませんよ?」
「ブヒ、ここから出られるなら、
長い旅に出かけるブヒ。」
「プグ助さん、本当に良いのですね?」
「ブヒ、どんと来いだブヒ。」
このプグ助の言葉を回路しゃんは受け取り、
心静かにつぶやいた。
「今ここに、
プグ助さんと私の相互契約が成されました。」
「プグ助さんと私の、
この長い旅路に、
自然の御加護と幸のあらん事を祈ります。」
こうして、プグ助と回路しゃんは、
長い旅路へと向かう事になった。
・・・
そして夜が明けて・・・
メシルコは、自らの腰に
「切れ味のよい人切り包丁」を下げ、
プグ助のいる特殊保管庫へやって来た。
パパちちはプグ助の解体前に
プグ助を最終チェックする考えだったが、
メシルコの方は姉としての責任を全うする為に、
割と真剣にプグ助を自らで処分する感じだった。
しかし、
ドアを開け中に入ったメシルコは
驚く風景を見る事となった。
室内にプグ助の姿は無く、
厚さ数十センチの鉄筋コンクリート製の壁面に
大穴があいていた。
これを見たメシルコは・・・
「プグ助がいない・・・と言うより、
音も無くセンサーにも反応せず、
特殊保管庫の壁に大穴があいている・・・」
と、
メシルコが特殊保管庫を調べていると、
床に落ちている石の下に
1枚の紙が置いてあるのを見つけた。
「紙に何か書かれている・・・」
メシルコは紙を手に取り、読んでみた。
「外で何か食べてくるブヒ。 プグ助」
と、書かれていた。
・・・
プグ助と回路しゃんは、
地平線の方から昇るお日様の光を浴び、
システムセンターから離れた場所を
清々しい朝方の空気に包まれ歩いていた。
「ブヒ、緊張と束縛から解放されたブヒ~。」
すると、プグ助のおなかから、
グゥ~~~~~~~・・・
という腹の音がなった。
「ブヒッ、気が抜けておなかへったブヒ~。」
おなかがへってヘロヘロ歩き
になっているプグ助に回路しゃんは話しかけた。
「分からなくは無いですよ、
プグ助さんにとっては
大きな環境の変化でしょうから。」
「ブヒ・・・何か食べたいブヒ・・・」
「これから長い旅が始まるので、
エネルギー補給は必要です。」
「おにぎりがありますけど、食べますか?」
と、プグ助に回路しゃんは聞いてみた。
「ブヒ、食べるブヒ!」
回路しゃんはプグ助に、おにぎりを2つ手渡した。
「プグ助さんの感覚の精度も見ておきたいので、
テストも兼ねてみます。」
「この2つのおにぎりの味を私に聞かせて下さい。」
プグ助は回路しゃんから手渡された
2つのおにぎりを見てみた。
「ブヒ、どちらも同じ見た目のおにぎりブヒ。」
そしてプグ助は、2つのおにぎりを食べてみた。
「それぞれどの様な味でしたか?」
「ブヒ、
違いはよく分からなかったブヒけど、
どっちもおいしいおにぎりだったブヒ。」
「そうですか、分かりました。」
おにぎりが食べれて満足という
プグ助の顔を見ていた回路しゃんは、
納得した感じだった。
「回路しゃん、どの辺がテストだったブヒか?」
「2つのおにぎりの違いが感じられるかのテストです。」
「回路しゃん、2つのおにぎりの違いは
どんな違いだったブヒか?」
「大した違いはありません。
詳しい答えは後日にしておきます。」
「ブヒ、そうなの?」
「それよりプグ助さん、
エネルギーは補給出来ましたか?」
「ブヒ、しっかり補給できたブヒ、
回路しゃん、おにぎりごちそうさまブヒ。」
「それは何よりです。」
プグ助と回路しゃんは、
それぞれの願いを叶える旅の道のりへ向けて、
最初の歩みを進めた。
「さぁプグ助さん、長い旅の始まりです。」
「ブヒッ。」
「まずは最初の目的地へ向かいましょう。」
「ブヒ、最初の目的地ブヒか?」
「・・・」「・・・」
こうして、
プグ助は回路しゃんと共に長い旅を
ブヒブヒと始める事となった。
(システムセンター編 完)
次回予告
ひょんな事から旅に出る事になったプグ助と回路しゃん。
だが、旅先では・・・
「ブヒ、
ぼくちゃん少しだけ回路しゃんを
うさんくさく感じてしまうブヒ。」
しかし旅は続き、
「昨日、わしの夢枕で誰かが
ここへ来れば良い事があると告げてはいたが、
もしかするとお前ぇさんとの「縁(えにし)」なのかも
知れないのぅ。」
「ブヒ、そうなの?」
そしてさらに、
「ブヒ、破壊神は倒しておくにかぎるブヒ、
行ってみるブヒ。」
「これでわしらは一蓮托生じゃ、
それじゃあ行くぞぃ、プグの字。」
・・・
プグ助と回路しゃんの旅路の先に
待ちうけているものとは?
プグ助の、いろんな味を食べてまわるブヒー旅
次回にどうぞご期待ください。
(つづく)
(ブラウザーの戻るボタンで
戻ってください。)